2014.11.3
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何はなくとも、もっとも驚いたもの、なるほど、これがシンガポールか!恐れ入った、と思ったものは、ナショナルスタジアムにありました。
このスタジアムは今年オープンしたばかりのスポーツなどあらゆるイベントができるアリーナで、最近ではサッカー国際親善試合、日本対ブラジルが行われた場所でもあります。みなさん、フィールドのコンディションの悪さに気を取られてあまり見なかったかもしれませんが、このスタジアムに、シンガポールの真髄があるのです。
このスタジアムのツアーガイドがツアー参加者に尋ねました。
「みなさん、この客席のシートの色をみてください!赤と白ですね。でもこの配色がランダムになっているのがわかりますか?上のほうにいくにつれて白の割合が多くなりますが、中段よりも上は、ランダムに赤と白がまざっています。下段、フィールドにちかいところはすべて赤になっています。これがどうしてだかわかりますか?」
「シンガポールの国旗の色を表しているのかしら?」
誰かが答えました。ツアーガイドはこのコメントにうなずいて、解説を続けます。
「そうですね、それもあります。ですが、もう一つ重要な理由があります!いいですか、良く見てください。客席がこういう配色だと、テレビなどで放映されたときに、客席が満席のようにみえるのです。あまり人気のないイベントでも、下の客席が埋まって上にまだ空席がある、あぁ観客が入っている人気のイベントだな!というように見えるのです!」
このガイドのコメントに促されるようにして、ツアーグループの人々が客席をぐるっと見回しました。なるほど言われてみるとそのとおりなのです。
こういう配色だと下はお客さんが入っているように見えます。
もともとテレビなどの放映では、フィールドに焦点があって客席はボケてみえるでしょう。そうしたあいまいな捕え方なら、なおさら、良くお客が入っているように見えてしまうのです。
見るとこの客席はあまりいい素材ではないプラスティックでできています、着脱も簡単そうです。イベントによってこの色合いを変えて、実際はガラガラのイベントでも満員御礼のように見せているのかもしれません。
興行主やスポンサー、こうした人たちが見ると、なるほど、あの新しいナショナルスタジアムは集客効果があるなぁ、あそこに広告を出すか!と決心したり、やはりこのスタジアムで次のイベントをやろう、と大きなイベント開催の場に選んだりするのでしょう。
この紅白のいすに座りながら、私はシンガポール人の魂を感じたのでした。
シンガポール人の魂とは、こうしたトリックで巧みに人をだます、その精神のことです。
英語ではcheatingですが、こうしたチート、騙し、がシンガポールの真髄なのではないか?と思わずにはいられなかったのです。