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2020.1.19

商人道と詐欺:利他は騙される?

我々が目指すべき商人道
というタイトルで、商人の社会的地位がなぜ低いのかということをお話しされ、それを改善するにはどうすれば良いのか?これをお話しされ、最後にはどのような考え方を持ち、どのような行動していけば良いのか?これを稲盛氏がお話しされています。

京都の商人道を説いた石田梅岩の話もありました。
「まことの商売は、先も立ち、我も立つ事を思うなり」

「経常利益10%の話をすると。。。経営者の皆さんは社員の人たちに頑張れと一生懸命言うわけです。しかし社員が稼いだその利益は、100%経営者のものになります。株式を公開していないのであれば、利益を上げるという事は、100%株主である経営者一族の財産が増えていくことになるわけです。そのために、資本家は労働者を搾取することによって、自らの富を増やしていくという見方が生まれ、それが近代における資本主義社会での労使紛争の原因ともなってきました。」
→奪い、奪い返すという奪い合う事のスパイラルに陥ると、マイナスのエネルギーが循環しますので、経済的な恵みが得られないものだと思いました。

「現在、京セラは、売上高一兆円を超える企業に成長しています。また、ニューヨーク証券取引所にも上場している国際的な企業でもあります。このような京セラの経営理念には、「株主価値を優先する」という文言は一切ありません。私も上場後に株主の存在を考えるようになりましたけれども、株式価値は会社が発展し、立派になっていけば、自然に上がっていくものだと考えています。そして、会社を立派にしていくには、会社に住む従業員が幸せで、元気よく頑張って働いてくれるようでなければならないはずです。そうでなければ会社が立派になるわけがありません。」

→最近よく、株価について考えていますが、やはり会社の立派になる度合いが、株価の成長と会っているということが腑におちました。

利益追求の為なら何でもする経営者として、不当に高い値段で売りつけたり、品質の悪いものを売りつけたりする経営者の話が書かれていますが、ここでも稲盛氏がおっしゃっているように、現代の日本のように競争社会になっていけば、このようなことで暴利をむさぼる事はできないとおっしゃっています。私もその通りだと思います。

その文脈の中で、病院や学校経営など公共性の高い事業でも株式会社の経営者が参画していく機会を挙げられています。経費の使い方を根本から考え、付加価値を生み出し、そこで働く従業員とその家族を養っていく、これは株式会社でももちろん可能なことなのだと思われます。

そして、これらを踏まえて経営判断の仕方を書かれています。

「我々が重大な経営判断を行う時、一番最初に行うのは状況分析です。今、置かれている様々な状況の事実関係をつまびらかにし、その事実を理性で分析、解析をします。一般には、次に経営者自身の誇りや名誉、尊厳を基準にして判断を行います。そして最後に、会社にとって損か得かということを判断基準として、結論を導いていきます。このようなことが、一般の経営者の判断方法です。しかし私はそれだけでなく「卑怯であってはならない」ことを基準に加えて判断するようにしてきました。KDDIの誕生においても、相手方の利益を優先させることによって、困難と思われた合併劇を成功させました。これはまさに、皆さんにお話ししている「自利利他」なのです。

自分の利益を得ようと思うのなら、まずは「利他」がいるのです。つまり、他人の利益の方が、自分の利益よりも先行しなければならないのです。お客様と交渉したり、従業員を説得するときに最も大事な事は、誠実さであり、謙虚さであり、素直さですが、同時に思いやりの心、慈しみの心が不可欠です。

私は、お客様の会社を研究したり、その経営者の方の心に思いを馳せるようにしています。この研究をするときに、心理学や潜在意識の話はとても役に立ちます。そして、相手が本当に求めている結果が分かった時、不安や懸案が解消され、この先どうなっていくのか?の予測が立ちやすくなると思います。この相手がわかる、という事は、合気道でも学んでいます。いわゆる、winーwinの関係を作り出すということだと思います。相手が嫌なことがわかれば、その反対の良いこともわかる、相手を喜ばせることができる。そうしたら当然、自分にも利益が回ってくるに決まってるじゃないか?合気道の山口先生がこのようにおっしゃっています。

まさに稲盛氏のおっしゃってることと、とても似ているなと思いました。

「では、相手が本当に悪い人であった場合には、どうしたら良いのか。この問題は、私も今まだ解がありません。しかし、私の場合には、お付き合いを始めた瞬間に、「どうも悪い人だ」ということが見えてくるのです。そうすれば、どんなにうまい儲け話であろうとも、そういう人とはもう付き合わないようにしています。悪い人と付き合う場合には、こちらも陥れられないようにし、術策を弄し、策略を持って立ち向かわなければならなくなり、それでは自分の心までもが汚くなってしまうからです。このようなことをしたくないので、そういう方とは一切お付き合いはしないようにしているのです。

一概には言えませんが、私は中国とのビジネスをあまりしません。ほとんどやらないと言ってもいいかもしれません。それは、どれほど国が経済力を持とうとも、基本的な誠実さというものを感じたことがないからだと思います。もちろん人にもよりますし、会社や、相手のスタンスにもよると思います。

けれども、国や経営のトップに立つ人の顔色を伺うのが最優先事項なので、お客や商売の相手方の顔が見えてきていないのが事実だと思っています。何かこの人たちは違うな、と思ったときの違和感、これを大切にしてきました。そして、その判断は今もそれほど間違っていなかったのではないかと思います。

先週も申し上げましたが、詐欺事件を分析していて気付いたことです。私も、一緒に担当していた別の専門職の方も、なぜこれだけの人がこの1人の人に騙されてしまうのか?という疑問を持っていました。語られる内容や、話す言葉などを一つ一つ分析していくと、この詐欺師の方は、自分が被害者であり、騙されたのは自分の方だ!!という思いを強く持っていらっしゃることがわかりました。

このような被害者意識が異様に高い人には、正義感が強い、そして名誉や名声欲求が強い人が集まってきます。そして、世の中の弱者、被害者を助けて、自分の欲求を満たそうとします。

しかし、いつまでたっても自分のお金を使わせられるだけで、正義感や名誉欲が満たされないので、自分が騙されたと思うようになるわけです。そしてここでも新たな被害者が生まれるわけです。

けれども、実際そこでやりとりされているのは、「気の毒な自分を助けてください」という被害者欲求と、「よし、社会的弱者のあなたを助けてあげよう、俺を正義の味方にしてくれ」という欲求が2つうまくマッチしているに他ならないのです。

誰かを見つけて、自分の欲求を満たそうとしている人は、このような詐欺に引っかかってしまうでしょう。

その根本には、自分が満たされていない、自分が何か奪われている、という意識があるからだと思います。

それであれば、自分は様々なものを持っている、自分の持ち合わせで、人の役に立つことができる、このような視点を持っていれば、絶対にこの手の詐欺事件には巻き込まれないことになります。

それは稲盛氏のおっしゃっている事では無いかと思います。相手がいくら、自分が被害者だといっても、稲盛氏から見れば、被害者でも何でもないことがよく見えるでしょう。そして逆に、本人がそれを望んでいるから、被害者になるという現実が現れているのだ、ということもよくわかるでしょう。他の機会でもたびたび、心に思い描いたことが現れる、とお話しされています。このように状況が分かれば、加害者を懲らしめることも、被害者に哀れみをかけることも、しなくていいわけです。一線を引くことができるのです。おそらく稲盛氏がおっしゃっている事は、このような事なのだな、ととても腑に落ちました。

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