2015.5.16
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「おっ、太陽だ、ヒャッホー!!」
イタリアの太陽が体にも心にも染み込んでいるせいでしょうか、雲の合間から覗く光が、妙に嬉しく感じました。何と美しいコントラストでしょう。イタリアでみる太陽も無論、美しいのですが、この曇り空の下、太陽にノスタルジーを感じている瞬間に、雲の間から眺める太陽は一際涙を誘う・・そんな気がしました。
次第に雲が薄れ、夕日の光が川面に光って見えました。夕日の向こうに、離れてしまったイタリアがあるような、大げさかもしれないのですが、万感の思いがしました。
曇天、厚く黒い雲、陰鬱な天気、これらはロンドンとは切っても切れないものです。また一方、燦燦と輝く太陽は、イタリア自体を象徴するものです。
故郷(ふるさと)は、遠きにあって思うもの、そしてさびしく歌うもの・・イタリアにいたターナーは、まばゆい太陽の下にあっても、イギリスの曇天を思ったはずでしょう。そしてまた同時に、このロンドンの曇り空を見上げては、イタリアの空を恋焦がれたはずでしょう。どちらもこの芸術家にとっては欠くことのできない心の故郷であったのです。
この画家は、天才といわれるアーティストによくあるように、「光と影」をよく知っていました。どちらもこの画家のスピリットには必要不可欠で、狂おしいほどの愛着があったのです。彼の絵を見ていると、そんな思いが沸いてきました。
ターナーが、イタリア旅行の後に描き続けてきたのは、雲と光でした。おそらくターナーもこの雲と太陽を見たのでしょう、光と影に対する切ないノスタルジーを絵に託して語ったのだなぁ、そう思いました。
ヴィクトリア駅に電車が入り、乗客が降りはじめました。
窓に背を向け、ふっと大きく息をついて、私はスーツケースの積み下ろし作業にとりかかりました。
これは2005年のイギリス滞在記録の抜粋です。
UK滞在記全文あるいは他国への旅行記はこちらをご参照ください。
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