2015.5.19
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「いいか、生活に困ったら、お前のこの美しさを誇れ、その美を生きる糧としろ」
エゴイストの塊のような荘園領主が、自分に心を開かなかった愛人テスを手放す際に言うセリフです。
自分でこのテスを飼い殺し状態にしておきながら、何をいってやがる!という見方が一つ、ですが、こんなヒドいことをした人間でも、最後にはテスのことを気遣うのか、少しは血も涙もあったのか!という見方がもう一つです。今は、この領主の人間像を分析する目的ではないので、それはさておき、本題に入りましょう。
このセリフがぴったりくるほど、ナスターシャキンスキーは美しいのです・・この映画は彼女の美しさを堪能し、イギリスの田園、森や小川といった自然を堪能し、さらにプロテスタンティズムの本質に触れる・・そんな映画だと思います。
プロテスタンティズムの本質とは何か?ですが・・非常にこれまた大ざっぱな言い方ですが、清く汚れがないこと、聖書の教えに従い、それと寸分たがわぬ生活を送ること、と表現できるのではないでしょうか?神は男をつくり、男から女を作りました。人は長じると親からはなれ、神が引き合わせた女を妻として娶り、生涯そいとげる、その言葉どおりの生活を潔しとする、その心意気のことではないかと思うのです。
妻でも何でもないテス、自分の意思ではないとはいえ、子供を流産し、秘かに葬らざるを得なかった・・これは既に、人間の行いとして神様を失望させるには十分であったのです。
テスと相思相愛の恋人エンジェルは倫(みち)を踏み外した彼女を許すことができませんでした。時が経過し、人を罰するのも許すのも人ではない、神であると悟ったときには、時すでに遅し、でありました。この世で生きるのではなく、神の国で生きるしか、彼らに道は残されていなかったのです。
この映画の舞台になった美しい田園風景はもとより、ラストシーンで使われたストーンヘンジは、今回訪れることができませんでした。もしも行くことができたとしたら、石の遺跡とプロテスタンティズムの倫理が、どこでつながるのかイメージできたのかもしれません・・・。
これは2005年のイギリス滞在記録の抜粋です。
UK滞在記全文あるいは他国への旅行記はこちらをご参照ください。
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