2015.5.20
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「ばあや、クーンメリーをお願い、ばあやの好きなチーズケーキを買って帰るから・・」 同年代の女性はほとんど知っていると思います。美内すずえ氏原作の漫画「ガラスの仮面」で、お嬢様女優、姫川あゆみがお嬢様お付のばあやに電話でこう語るのです。 この、あゆみさん御用達の紅茶、クイーンメリーを私は香菜ちゃん宅で味わっています。一口すすってその美味しさに驚きました。香りとコクがぜんぜん違うのです。上品な香りが鼻腔に伝わり、ふーっと息を吐くと心の底からリラックスできるのです。 あたたかなスピリットがゆっくりと胃に流れ込んでいくのがわかります。こんなに美味しい紅茶は久しく飲んだことがありませんでした。 イギリスで一番おいしいもの、それは何といっても紅茶です。 何がここまで紅茶を美味しくさせるのかわかりません。水の質はヨーロッパであるから硬水、ヨーロッパの他の国と比べて、特に変わるところは無いはずです。島国であるので、ここでできる水も一味異なっているのでしょうか?この島の北、スコットランドでは「水が命」のスコッチが作られるのです。してみると、オランダのビールが美味いように、この国の水に秘密があるのでしょうか? それとも茶葉が違うのでしょうか?インドでとれる茶葉のうち、女王さまの目にかなう厳選された茶葉のみがイギリスに出回るのでしょうか? あるいは、ワインに旅をさせてはいけないように、紅茶にも旅をさせてはいけないのかもしれません。ごく当たり前の茶葉であっても、赤道を通り、日本に輸出される間に品質が変化してしまうのかしら・・ 13年ほど前、浜松で3ヶ月暮らしたことがあります。毎日、朝の一杯と、三時のおやつに出される緑茶がことのほか美味しかったのを覚えています。東京に帰るとき、お土産として買いました。実家で飲んだ緑茶は、浜松のお茶とは似ても似つかないものでした。淹れ方を工夫したり、いろいろ試したのですが、同じ味は再現できませんでした。東京の水で入れたのでは、静岡茶の美味しさは引き出せなかったのでしょう。 やはり決め手は水にあるのでしょうか?
フランスで飲むカフェをイタリア人はいたく嫌います。
ヨーロッパMBAスポーツ選手権で学校の仲間とパリに滞在したときのこと、朝食のテーブルでは、ほとんどの人がカフェを頼みます。けれども、一口飲んだ後の反応はみな同じ、顔をしかめて首を振り、再び口をつけようとはしませんでした。
エスプレッソの香りはイタリアの香りです。こう言い切れるほど、イタリアのカフェは香り高く味わいがあります。イタリア人にしてみたら、フランスのカフェは、豆の選び方、ひき方、淹れ方・・何から何までなっていないのでしょう。
私は、カフェを飲みません。なのでやむを得ずバールBarに入るときも紅茶を頼みます。しかしカフェ王国イタリアでは、紅茶テteは超マイナーな飲み物です。カフェに比べるとバリエーションも少なく、バールで頼むとお湯とティーバックが、ボンッと出されます。自分が少数民族になったかのような悲哀を感じる瞬間なのです。
ところが、ここイギリスでは少数民族が逆転しています。カフェスタンドに入ってもまず、メニューの一番最初にTeaと書かれています。ホテルに泊まり、朝食のテーブルで紅茶を頼むと、茶葉は何がいいか、飲み方はどうするか(ミルクかレモンか)、当たり前のように聞いてくれます。ああ、ここは紅茶の国なんだなぁと思う瞬間です。
おそらくイギリス人がイタリアに行ったら、紅茶の味わいはもとより、紅茶の地位の低さ、肩身の狭さを嘆くことでしょう・・・あるいは紅茶専用の浄水器なるものを発明するのではないでしょうか?クイーンメリーを味わいながらふと、そんなことを考えたのでした。
これは2005年のイギリス滞在記録の抜粋です。
UK滞在記全文あるいは他国への旅行記はこちらをご参照ください。
http://yukina-s.com/global/index.html