バカボンダ  世界を見た女の地球放浪記

2015.5.23

笑う騎士 11 UK滞在記

笑う騎士限りなく眉に近づいた、鋭く細い目、つるつるに発達した前頭葉、そして桜色した頬・・この三大アクセントを持つイギリス人、どこか憎めない印象なのですが、私は彼らに対しては、ニコリともしない、重厚な紳士というイメージを持っていました。

ところが、ここロンドンでは奇妙な光景を目撃しています。やつら、英国紳士が薄笑いを浮かべて、道を歩いているのです。

バンク駅は東京の大手町に匹敵する金融街です。そのビル街を英国紳士たちが上等のスーツにビル風を孕み、颯爽と闊歩していきます。しかし、が、しかし、顔は微笑んでいます。いや、ニヤついていると言ったほうがいいかもしれません。

一体何があったのか、あたかも昼休みの食堂で見た、テレビ茶の間劇場?のワンシーンを思い出して笑ってしまったという雰囲気です。株が値上がりしているのか、自分のサポートするサッカーチームが勝ち続けているのか、はたまた、明日から夏休みと思うだけで笑いがこみ上げてくるのか・・

いくら同じような原因があったとしても、日本のサラリーマンがここまで笑うことはありえません。仮に日本紳士が、あまりに嬉しいことがあって、薄ら笑いを浮かべたとしましょう。たちまち周囲のヒンシュクの目と厳しい批判のまなざしをくらって、はっと我に返って自分の口元を引き締め、難しい顔を作り直す・・これが日本のサラリーマンの態度でしょう。

オランダの画家ハルスは肖像画、庶民の生活画で有名です。彼が描いた「笑う騎士」はロンドンの美術館で見ることができます。肖像画には珍しく、中世の騎士なのに、道歩く現代英国紳士と同様の、何とも言えない薄笑いを浮かべているのです。

医学的に「笑い」は心身の機能を活発にさせるそうです。「大笑い」とはいかないまでも、こんな「薄笑い」を浮かべるサラリーマンが日本のビジネス街でメジャーになったら、日本経済の先行きは明るいかもしれないなぁと、ふとそんなことを考えたのでした。

写真はハルスの笑う騎士

 

これは2005年のイギリス滞在記録の抜粋です。

UK滞在記全文あるいは他国への旅行記はこちらをご参照ください。

http://yukina-s.com/global/index.html

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