2015.3.6
さて、ここでワードチョイスについて考えてみましょう。あなたは実際にどう言えばよかったのでしょうか?どのような言葉、表現を使えば、自分の意図を誤解なく相手に伝えることができたのでしょうか?
この相手の運転手の受け答えに、あなたが使うべきだったワードチョイスのヒントが隠れています。この運転手さんは”You can walk from here” と言いましたね。これは、あなたはここから歩くことができる、つまりここから歩いていきなさい、歩いていけばいい、という意味です。
日本の英語教育ではcanは「~することができる」と可能をあらわす表現として使いますが、実際に英語が国際語として話されるシチュエーションでは非常に多く、例題で示したようなCanの使い方をします。ネイティブ・ノンネイティブに限らず、あらゆるシーンで英語が公用語として使われる場面、国際会議や海外の相手方とのビジネスなど、コミュニケーションのツールとしてきちんと伝わる英語を話すことが求められる場面、これを英語界と呼ぶことにします。英語界ではこのCanを非常に多く使います。そしてその意味は、「~することができる」、という可能よりも、「~すればいい」、「~してください」という依頼、命令のニュアンスを含むことが多いのです。
先のタクシーの例では、目標とするマンションの門が近づいてきたら、そこで車を停められる前に、門の中を指差して”You can go in”とタクシーの運転手に言えばよかったのです。
この表現自体は、「あなたは(中に)入ることができる」、という意味ですが、訳としては、どうぞ中に(車ごと)入ってください、という意訳が適当ではないでしょうか。
このように、中に入ってくださいの適切なワードチョイスはCanを使った”You can go in”なのです。そして、canはこのようにもっとも簡単な言葉、中学生の最初の英語学習の場で学ぶ、基本単語でありながら、実際には日本人がもっとも使うことが難しい英語、と言えるのではないでしょうか?