2015.3.7
実は、これは私が実際に体験したことなのです。初めてニューヨークに行き、友達の家にお世話になったとき、彼女は空港から直接タクシーで来てくださいと私にアドバイスしました。そして、まさに至れり尽くせりだと思うのですが、彼女はタクシーにのってから、マンションの前に来て、どうやって運転手に伝えれば、車ごとエントランスに横付けしてもらえるか、メールで指示してくれたのです。「”You can go in!”と言って塀の中を指差し、エントランスに入ってもらうこと」彼女が私に出した指示は、今もはっきりと覚えています。こうした彼女のアドバイスがあったので、私は路上でタクシーから降ろされ、思いスーツケースをガラガラひいて、ビクビクしながら夜道を渡ることもなく、無事に友人の部屋までたどり着くことができたのです。コンシェルジュに友人の名前を告げると、友達はすぐに階下に降りてきてくれて、荷物も一緒に運んでくれました。
この例から、Canという言葉の使い方をご理解いただけたでしょうか?Canはこのように相手に命令したいときに使うことができる便利な言葉です。もうひとつ、Canの使い方を良くあらわす例をお話しましょう。
英国のサッチャー元首相がなくなったときに、彼女の名言集のような映像がテレビで流れました。おそらく国会での答弁か何かでしょう、彼女の推進する政策に反対する政治家に対して、”You can turn around if you want to ”と言っていました。このときの日本語字幕は、「もどりたければ戻りなさい!」でした。会場からは、おぉっというどよめきの声が上がっていましたが、彼女のセリフのニュアンスと適切な意味・訳という点では、この日本語は的を射た適訳と言えます。「そんなにいやなら好きにすれば、やれるものならやってご覧なさい!」という、一国の首相としての強気の意図が見て取れます。
問題は、この日本語訳を見て、この英語“You can turn around”が浮かんでくるかどうかです。この場合は「戻れ」と命令している訳ではないのです。「戻る」ことはもちろん推奨しないが、それほど今や将来がいやなら戻ればいい、戻ったってかまわない、そう言っているのです。このように、自分は勧めないが相手がそんなにやりたいならやれば!というニュアンスを出す、それがこの簡単な単語canで見事に表現できるのです。